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日本が世界に先駆けて人間と動物のハイブリッド実験を正式に認可 / 攻殻機動隊のメディテック社的なヤツ

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文部科学省も東京大学もやるやんけ……! まさかこんなに柔軟な判断をするとは。サイエンス誌によると、人間と他の動物のハイブリッドを作る実験に、日本が正式に認可を出すそうだ!

諸外国では倫理的な問題で禁止されていたり、そうでなくとも反対の声がそこそこあるためオフィシャルな支援は得られないことが多い実験。しかし臓器再生医療の未来的には大きな希望となりえる実験でもある。めちゃくちゃわかりやすくお伝えしよう!

・メディテック社

人間と他の動物のハイブリッド……とか聞いて想像するものはなんだろう。「ロード・オブ・ザ・リング」に出てくるウルクハイやら、あるいは「X-MEN」でありがちな人体実験の果てに生み出されたミュータント的な悲しみに満ちた存在たちだろうか。

気持ちはわかるが、少なくとも今回はそういう感じではない。「攻殻機動隊S.A.C」をご存知の方なら一発でお分かりいただけそうなのが、「ジェイムスン社長でおなじみメディテック社のヤツ」という例えだ。

メディテック社とは、顧客の遺伝子を豚にぶち込んで、豚の体内で人間のスペア用臓器を育てて売るというビジネスをしている架空の企業。文部科学省の認可のもと東大が実施予定の実験は、まさにこの最初の一歩になりそうなものなのだ。

・ヒトのiPS細胞をぶち込む

東大が実施予定の実験の概要はこうだ。まず人間の iPS細胞をネズミの胚にぶち込み、その胚をネズミの子宮にぶち込む。うまくいけば、人間の細胞から育った臓器を持つ、ハイブリッドな子ネズミが爆誕するわけだ。

ハイブリッドたちは、たとえ人間の細胞が入っていても、某夢の国のネズミのような高い知能は持たない、内臓以外は普通のネズミ。彼らが何の問題もなく育てば、次はより大きな動物で同様の実験を行う計画だと思われる。

最終目的は、この方法によって他の動物の体内で育った人間の細胞由来の臓器を、人に移植できるようにすること。異種間移植の新しい方法である。

現在多くの国で進行中の異種間移植の研究といえば、遺伝子改変した豚の臓器を人間に移植可能にする……というもの。こちらも日々進歩し続けているが、成功にはまだまだ遠い。

たとえ遺伝子改変していたとしても、やはり豚の細胞から育った豚度100%な豚臓器と人間では、何かと問題が生じるのだ。例えば強い免疫反応が起きてしまったり、そのままでは豚のゲノム内に組み込まれている内在性のウィルスに人間が感染してしまう問題などである。

だが、これが他の動物の体をレンタルしているだけで、人間の細胞から育った臓器ならもっとイージーに……ということである。もちろん実際にどのような問題が生じるのかなどは不明だが、可能性に満ちているとは思わないだろうか。

・マウスとラット間では成功

ちなみに認可を受けたのは東大の中内啓光教授。彼の所属する部署である幹細胞治療部門のHPを見てみると、どうやら過去にマウスとラット間で似たようなことを成功させているようだ。

ラット内で作成したマウスの膵臓を、糖尿病のマウスに移植して治療したところ、治療を受けたマウスがしっかりと1年以上生存したとのこと。もちろんマウスとラットで成功したからといって、人とその他の動物でも上手く行くとは限らない。

だからこその研究であり、実験なのだし、そもそも認可が下りないと実験すら出来ない。倫理的な議論が大いにある領域だが、移植を待つ間に死んでしまう患者の生存率上昇に貢献できる可能性を秘めた研究なのも事実。

当サイトの見解とかそういうのとは全く無関係に、筆者個人としてはこういう研究を日本がリードするのは最高にクールだと感じている。研究チームには是非頑張っていただきたいものだ。それにしても、ほぼ似たような技術を16年くらい前に描いてた攻殻機動隊も半端ないよなぁ……。

参照元:Science(英語)、東京大学
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.