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上野公園で初対面の人たちと花見してみたら…

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「週末に上野公園で花見」……その響きだけでもう、疲れた気になる人も多いのではないだろうか? 私は田舎生まれなせいもあってか桜を愛するより人混みを憎む気持ちのほうが強い。そのため東京で花見に行ったことすらない。誘ってくれるようなゴキゲンな友人もおらず、毎年気づけば桜は散っているのである。

「なにごとも経験」をモットーに生きる身として、こんなことではダメな気がする。メチャクチャ行きたくないけど、とりあえず行ったことにしよう。うん。嫌なら帰ればいいじゃないか。

この日は土曜日。暖かな陽気で絶好の花見日和である。少しでも人混みを回避しようと、出かけたのは夕方5時……にもかかわらず駅から公園に向かう道のりで、すでに1カ月分くらいの通行人とすれ違った。

そろそろ帰っていいですか?

・みんな浮かれてる

公園内はどこも大混雑だが、ちゃんと前を見て歩けば他人とぶつかるほどではない。グループで来ている人たちが通路の真ん中で立ち止まって自撮りをしたり、大声を出しながら踊ったりしているので、うっかり桜なんか見上げていると危ない。

みんな楽しそうである。

通路の両サイドにはどこまでもギッシリとレジャーシートが敷かれ、団体の花見客が宴会を繰り広げている。まさに想像どおり。絵に描いたような上野公園っぷりだ。

孤独を噛み締めながらトボトボ歩きつづける。

……と、ある花見席に置かれたボードが目に入った。

そこには手書きで「誰でも歓迎! みんなで花見しましょう!」の文字が。えっ、なにコレ? かわいいニッコリマークまで付いている。見ればシート内では複数の若い男女が、酒を飲みながら楽しげにしている様子だ。

出たーーー!!!

これはたぶん高田馬場とかでよく見かける「陽気な若者の集団」っ……!

私の苦手なやつである。

キャッ! 目が合っちゃった! ニッコリ手招きされてしまったぞ! どうする……?

・ただの気のいい連中だった

「なにごとも経験」の言葉を思い出した私は、思い切って輪に加わってみることにした

マブダチ同士にしか見えなかった若者たちだが、なんと全員この日が初対面だという。楽しそうにしている男女グループを見ると、いつも反射的に「イチャイチャしやがって」と感じてしまう自分がいる。しかし、話してみると彼らは全然イチャイチャしているわけではなかった。

この花見を企画したのは24歳の真面目そうな青年。場所とりのため昨夜は寝袋で一夜を明かしたというから驚きだ。彼も1人参加である。一体なんのためにそこまで? と何度尋ねても「交流の場を作りたかった」の一点張り。最近の若い子ってこんなにアグレッシブなんだっけ?

声をかけてくる通行人は平均して1時間に7〜8人ほど。実際に輪に加わったのはその半数だった。通行量の割には意外に少ないという印象である。ちなみにその内訳は大多数が外国人とお年寄りだ。

若い人は我々をジロジロ眺めていくものの、用心深いのか目が合うとサッと逃げてしまう。うん。その気持ちすごく分かる。私だって今回はたまたまいい人たちと同席できただけかもしれない。

やはり声をかけてくる中には、酔っ払いやナンパ目的と思われる人物も少数いた。相手にしないでおくとあっさりどこかへ行くので、それを恐れるが故にこういったコミュニティに参加しないというのも、少しもったいない気がする。だからといって「ぜひ参加するべき!」などと言っては責任が持てないけれど……。

少なくとも私がこの日同席させてもらったのは、異文化交流と友達づくりを目的とした健全な集いであった。生まれて初めて「お花見楽しい」と感じたよ。仲間って、いいよね!

もしあなたが「友達が欲しい」と思っていて、お花見でこういった席を見かけたなら、思い切って話しかけてみるのもアリなのではないかと思うのだが……どうでしょう? 気が合わなければ帰ったらいい。万が一よくない人に出会ったとしても、さすがに殺されることはないだろう。だって、周りにこれだけ人がいるんだもん。

お花見スタッフの方々も巡回しているので安心だ!

・パフォーマー多数

日が暮れても花見客は一向に減らない。我々の席は順調に人が入れ替わり続け、私は古株になってきた。

芸人など様々なパフォーマーの方々が花見席を練り歩き、芸を披露する光景は毎年恒例なのだそうだ。友達と座って桜見ながら酒飲んでたら芸人が来てくれるって……これは貴族の遊びですか? さすが上野公園。「日本一有名な花見どころ」だけのことはある。

・夜は22時ごろまで

公園のライトアップは20時で消灯され、徐々に人が減り始めるようだ。

この日私が同席したのは総勢約50人、国籍は15以上だったと思う。朝からのカウントだと100人を超えているらしい。

語学の勉強相手を見つけた人、同じ最寄駅ということで意気投合した人、フォロワーを増やした人などがいた。たくさんの出会いがあったようだ。

人混みギライを治すのは難しい。しかしたまにはあえて行ってみれば……新たな出会いや発見があるかもしれない。

後片付けして帰宅するまでが花見である。マナーを守って楽しもう!

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.