ネットにスマホに、便利な時代になったもんだ。コンビニエンスな世の中は、個人的には好きだ。便利過ぎて困ることはないと思っている。とは言え、時に不便な経験をすることも大事だろう。
そんななこんなで突然ではあるが、この度、人力で動かすロープウェイ「野猿(やえん)」に乗ってみた。鉄線橋(つり橋)がかけられるまでは、交通手段として使われていたものなんだって。手でロープを手繰り寄せて動かさないといけないため、結構しんどいぞ!
・スキーリフトのアナログ盤「野猿」
「野猿」と聞いて、どんなものかパッと頭に思い浮かべることができる人は、なかなかヤルな! わかっているとは思うが、野生のサルでもなければ、テレビ番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』から生まれた音楽ユニットでもない。
簡単に説明すると、スキー場にあるリフトのアナログ盤みたいな感じだ。スキーほど高低差がある場所で使うものではないので少し違うが、だいたいそんな雰囲気だ。川の両岸からワイヤーロープを張り、人が1人乗車できる屋形を取り付けているのだ。
ある程度までは助走で勝手に屋形が進むが、進まなくなれば自らロープを手繰り寄せて動かさなければならない。なかなかハードである。かつては、この野猿が対岸へ行く唯一の交通手段だったそうだ。ちなみに、猿が木のつるを伝って行く様子に似ている事から、この名が付いている。
・急発進する屋形にビビる
記者は奈良県の十津川村で野猿体験をしたが、同村のほか徳島県や静岡県にもあるらしい。いずれも山深い場所だ。ごたくはさて置き、実際に乗ってみることにしよう。まずは屋形と呼ばれる、小屋のようなものの中に入る。そして屋形をつなぎとめているストッパーを外そう。
すると、勢いよく対岸へ向かって屋形が進みはじめる。あまりに勢いが良すぎたため、一瞬焦ってしまったが、慣れると結構楽しい。周りの景色をのほほんと楽しんでいると、ロープの3分の1ほど進んだところだろうか。ピタッと屋形が停車する。助走が切れたのだ。
・無事に渡りきることができるのか不安になる
さて、問題はここから。止まった屋形を、自力で動かさなければならないのだ。方法は簡単で、屋形の中に通っているロープを引くだけ。簡単なのだが、これが結構なパワーを要する。「え……これ無事に向こうまで行けんの? 無理じゃない?」と何度思ったことだろう。
ゴール近くになると、若干上りになるので、これがまたシンドイ。昔の人は強いなとひしひしと感じた次第である。記者は何の準備もして行かなかったが、軍手を持って行くことをオススメする。ロープを手繰り寄せる際に手がこすれて、マメができてしまった。
もう一度乗りたいかと聞かれたら、元気よくうなずくことはできないが、乗ってみて良かったとは思う。こじんまりとした屋形の空間はワクワクするし、風を切る瞬間も爽快だ。まあ、筋肉痛になったけどな!
・今回ご紹介した施設の詳細データ
施設名 十津川温泉ホテル昴敷地内
住所 奈良県吉野郡十津川村平谷909-4
時間 24時間乗ることができるが、暗くなると危ないため自己判断で
Report:K.Masami
Photo:Rocketnews24.