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脱サラして世界初の「ラグビー登山家」になった日本人がいた! ラグビーW杯を盛り上げるため出場国の最高峰山頂へトライ中

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2019年秋、ラグビーW杯が日本で開催される。このことをどれくらいの人が知っているだろうか。ラグビーファンからすると何を今さら……と思ってしまうところだが、現実は悲しいかなそうでない。「日本であるの?」「いつ?」といった声も少なくないのが現状だ。

開幕日の9月20日まであと約半年。現状をどう打破するのか不安が募るが、1人の元ラガーマンが2年前から信じられない行動に出ている。「ラグビー登山家」の長澤奏喜さん(34歳)は、より多くの人にW杯のことを知ってもらおうとラグビーボールを抱えて各国の山頂へトライする挑戦を続けているのである。

・脱サラしてラグビー登山家へ

高校からラグビーを始めた長澤さんは、大学生活でのプレーも経て一般企業に就職した。社会人になったらスポーツと縁がなくなることは決して珍しいことでなく、例に漏れず長澤さんも離れた。しかし、2017年3月に再びラグビーと運命が交錯する。勤めていた会社を退職……脱サラして世界初のラグビー登山家になることを決めたのだ。

なぜ退職してまで挑戦することにしたのか。また、なぜラグビーボールを抱えて各国の山頂へトライすることにしたのか。その理由は2015年W杯の南アフリカ戦にある。日本代表が格上相手に大金星をあげ、世紀のジャイアントキリングとも言われた試合だ。

当時、仕事に追われる毎日を過ごしていた長澤さん。試合が気になっていたものの、心の中で勝利に期待していない自分がいて生中継も見なかった。しかし結果は周知の通り。それから後悔する日々が続き、急速に冷めていく世間のラグビー熱を見て本気で日本代表を応援しようと決意したという。

そしてラグビーのために何かできることはないかと考えた末、誰も選ばないような方法でW杯を盛り上げたいと決意。日の出がラグビーボールのようだったこと、山頂にトライしているみたいに見えたことからヒントを得てラグビー登山家に転身した。

日本で開催されるラグビーW杯のエンブレムには「富士山」が描かれている。世界の頂上にトライすることで、ラグビーW杯の日本開催を世界中の人に想起してもらいたい……今では現地での草の根活動も行っており、W杯をPRしている。

・ラグビールールにのっとって登頂

そして長澤さんは登山するにあたり、独自のルールを決めている。ずばりラグビールールにのっとって登頂するというものだ。ラグビーはボールを前に落とすと反則(ノックオン)となるが、山登りでも適用。落球したら10メートル後退し、スクラムの姿勢から再出発している。

どんな場所であっても決してボールは離さず、山頂にボールを “トライ” したらゴール。これまで天候で登頂が叶わず、再試合もあったが20カ国に “トライ” し、残すは日本の富士山を含めて5カ国となった。

・日本だと絶対にない体験談

これから4月にカナダ、6月にはアメリカ、7月にはジョージア・ロシアとの試合を予定している長澤さん。最大の難関「標高6190メートルのデナリ(マッキンリー)」も控えている訳だが、これまでの登山も一筋縄ではいかなった。

例えばコートジボワールのニンバ山。鉱物乱獲もあって一般人が侵入禁止になっている紛争地帯であることから登山は難しい……と思いきや、許可を申請していた相手が官公庁のトップという幸運があった。

軍人に付き添われ、野生のゴリラに間近でドラミングされて一触即発の状態となりつつも登頂してトライ。他にもジャングルや砂漠、原住民から「炎の山」と呼ばれるナミビアのブランドバーグ山……長澤さんは数々の試練を乗り越えてきた。

また、トンガでも思わぬ体験をしたという。同国の最高峰は無人島で登頂するのは困難だったが、首相の孫で官公庁トップでもある人物が力を貸してくれた。そこで紹介してもらったラグビー好きの州知事と一緒に登山。漂流しながら島にたどり着いたかと思えば、州知事が肉離れした上に遭難(翌日に発見)と国際問題になるかもと心配したそうだ。

ただ、いろんな国へ行くたびに長澤さんはラグビーの力を実感したという。特にラグビーの盛んなニュージーランドやオーストラリア、サモアなどでは、言語以上にラグビーの力が強く、言葉を交わさずとも繋がり合えた。One For All、All For One。どの国に行ってもラグビーはラグビーだった。

・残す山は5つ

先述したように残す山は5つ。4年に一度のW杯に向けて長澤さんは加速する。なお、今後の挑戦を個人で応援することができ、クラウドファンディング「#World Try Project」から支援するとさまざまな特典を受けられる。

一緒にラグビー観戦することをはじめ、富士山を含めた国内開催地の最高峰登山チケットなど、リターンはラグビー登山家ならでは。日本で開催されるのは一生に一度かもしれないW杯──日本人のラグビー登山家が世界を振り向かせる日は近い。

参考リンク:クラウドファンディング「#World Try Project」、長澤奏喜HP「# World Try Project」Facebook、Instagram @nagasawa.sohki
執筆:原田たかし
Photo:長澤奏喜